引き足
宙吹きガラスでも型吹きガラスでも同じことですが、カップ部ができた所に、足をつけてワイングラスの形にする場合の足の付け方です。
切子細工では、江戸切子にしても薩摩切子にしてもコップのような形が多く、足をつけたワイングラスのような形はあまり数が多くありません。
足の付け方には、付け足という方法と引き足という方法とがあります。
引き足の方が形良くなりやすいですが、熟練した技術が求められます。
工程だけ追ってみます。
カップ部の足になる先端部分をたたいたり、つぶしたりして細長状にし、ハシを斜めに寝かせながらしごいて延ばします。延ばした部分をステムと言います。
このとき先端部は塊りの状態で残します。
必要な長さまで延ばしたら、残しておいた先端部をたたいて立ち上げます。円盤を作るわけです。
その小さな円盤に新たなガラス種を乗せてワイングラスの台部分を作ります。台部分のことをフットといいます。
新しい種を巻きつけるのに、一気に付けませんと、温度むらのためフットが丸く伸びてくれません。
また、アワが入らないようにつけることも大切です。新しい種は1300゜C位の高温にしてドロップ状にしてつけるのがよろしい。
そうして十分高温のうちに回転による遠心力で円盤を作ってしまうようするのがコツです。
この技法は型吹きガラスでも使われますし、宙吹きガラスでも使われます。型吹きガラスの良いところは、何と言っても同じものがたくさん作れることです。型吹き硝子の問題点は型が高価なことです。とくに耐久性のある型は高価になります。
型吹きでも、宙吹きでも同じですが、新しい種を巻きつけるのは助手の仕事です。
助手の技量も相当高いレベルが要求されますし、一瞬のうちに円盤に仕上げる作家の技は見ていても惚れ惚れする所があります。
このように長い足をつけたグラスに切子細工はあまり行われないようです。筆者の勝手な考えですが、長足江戸切子の切子細工はなぜ少なくなるのか考えてみました。
薩摩切子の場合カップの肉が厚いですから全体のバランスが上部に移動し、作品のバランスに問題が起きるかもしれません。江戸切子に長い足をつけた場合、できないことは無いと思いますが、切子細工の工程でかなりコストが掛かる可能性があります。足が邪魔なわけです。江戸切子や薩摩切子ではなぜ足つきの切子が少ないのか、一度工房に行って聞いてみたいと思っています。
|