棹元
型吹きガラスは切子細工の素材として江戸切子や薩摩切子にも使われます。型吹きガラスだからいつも同じに出来ると思うとそうでもありません。扁肉していると切子細工するのに困ります。江戸切子などは比較的薄いですから扁肉していると困るわけです。
吹きガラスでは、この吹き棹の先端に付けた硝子の付け根を棹元と言い、その縁は均一でなくてはなりません。そうでないと吹いたとき肉厚が偏ってしまうからです。
型吹きガラスにせよ宙吹きガラスにせよ、吹き棹の先端に溶解した硝子を付けてこれを吹いて膨らませます。
最初に硝子を棹に巻きつけますが、棹をあまり硝子の中に突っ込みすぎてもいけません。まず2cmか3cmくらいにします。
巻き取ってきた縁がガタガタしてるのは、溶解炉の中で、一定の深さで一定の速度で棹を1回転していないということです。
このように棹元が均一でないと、肉の偏る原因になります。型吹きガラスの場合よりも宙吹きガラスの場合に影響は大きく、形の歪にもなります。
コップ形状のグラスはよく切子にされます。切子はグラスの表面にダイヤモンドホイールなどで切子細工するわけですが、形が歪んでいたり、口元が真っ直ぐでなかったりすると困るのです。江戸切子などは直線の切り込み線の集合のようなものですから、幾何学的な文様となり、グラスが歪んでいると商品にはならなくなってしまいます。
棹元の不均一は扁肉だけでなく作品の口元周りに影響を与ますので注意が必要です。
もし不均一になってしまったときは、次の種取りのとき、前回より深く突っ込み、今度は均一につけるようにします。
型吹きガラスでも宙吹きガラスでも、何回も巻きつける大物では棹元の重さも結構重くなります。
作品をポンテに移した後、使い終わった棹元が残りますが、これは別にして溜めておきます。
溶解で棹元を沢山混ぜますと透明性が損なわれるようになってきます。
型吹きガラスで作られた素材は切子工場に送られ、江戸切子などにされる場合もありますが、切子は透明性が命です。切った所がきらりと輝いてこそ切子の価値があるのです。薩摩切子はぼかしを特徴としますが江戸切子はすがすがしい感じを特徴としていますからなおさらのことです。透明性を高めるためにクリスタルガラスを使うこともあります。
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