切子

型押しガラスと型吹きガラスの違い


切子細工はダイヤモンドホイールなどでグラスの表面に模様を彫刻することですが、この切子細工によって江戸切子や薩摩切子が作られます。このとき、その素材となるグラスは吹きガラスによることが多いのですが、型押しガラスで作られることもあります。
型吹きガラスは外型のみを用い、内部は空気で膨らませて作られますが、型押しガラスは内型も使います。外型の中に溶融したガラスを入れて、速やかに内型を押し込んで成形します。
型押しガラスはプレスガラスとも言われます。
外型は複数の「割型」になっており、型吹きガラスよりも複雑な形状にでき、安価にできるため、一般に広く取り入れられました。
しかし江戸切子など切子細工では、この素材のコストに比べて切子細工の工程でのコストの方が大きくかかりますし、品質的には吹きガラスのほうがよいといわれていますので、あまり型押しガラスは使われません。特別な形にしたい場合や、どうしてもコストを押さえたい場合には、型押しで切子の素材が作られることもあります。
型吹きガラスは宙吹きガラスとともに一世紀頃のローマ時代からありましたが、型押しガラスは何と1800年台になって発明されているのです。
1800年の中ごろからは全自動化が進み、本格的な量産化が行われています。
庶民のテーブルには、コップと大型ワイングラス一種くらいしかなかったのですが、この全自動化のお陰でアペリティフグラスやリキュールグラスなどが乗るようになりました。
さらには食器に限らず装飾品の分野にも登場してくるようになり、安価でだれにでも購入できるようになって来たのです。
しかし初期のものほど相当雑な作りになっています。
型吹きガラスは高級品に使われ、型押しガラスは安価なものに使われる傾向にあったようです。
外型は2つとか3つとかに分割された割型になっていますので、その合わせ面にガラスが入り込んで突起になっています。
これをバリと呼んでいますが、かなりひどいバリだらけの製品が目立ちます。
当時の製品を見ますと、このバリが筋状についており、2本ならば2つ割の型を使っていたことが分かりますし、3本なら3つ割の型を使っていたことが容易に分かります。
また、バリ以外にも型押しガラスの古いものには、シワ、荒れ、ヒビなどの不良箇所も多くありますが、これが古さを感じさせてくれる"味"なのかもしれません。
これはこれでその価値があるのですが、現代の切子は工芸品として存在しています。工芸品というのは、飾っておくほどの美術品ではないにしても、相当高い芸術性を持った実用品と言う意味です。もし江戸切子にバリが有ったとすれば、たちまち悪評となるでしょう。
そのため江戸切子や薩摩切子の素材には充分な品質が要求されるのです。

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