切子

宙吹きガラスの道具


宙吹きガラスを作る道具は簡単なものだけです。宙吹きガラスにしても型吹きガラスにしても吹きガラスは手で作るのです。ですから吹きガラスの場合、道具といってもほんの簡単なパイプとハシやピンセットのようなものだけです。ほかにも2〜3有るにはありますので紹介してみます。
江戸切子や薩摩切子の素材グラスもこのような道具で作り、切子細工の工場にまわされます。

吹き棹
宙吹きガラスはこの吹き棹がなくては作れません。
金属製の中空パイプで、片側が吹く方で反対側はガラスを巻き付けます。
口をつけて吹く所には、ステンレスやプラスチックのキャップが付いているものもあります。
吹き竿の太さは何種類かあります。
通常コップ類を吹くときは1.3cm 位がよいですが、これより大きいものを吹く場合はもっとパイプ径の大きいものを使います。
長さは大体、1mから1.5mくらいです。
ガラスの素材として形を作る工場と模様を彫刻する工場はほとんどの場合別になっています。江戸切子や薩摩切子の素材グラスもこのような道具で作り、切子細工の工場にまわされます。

ベンチ
ブロー台とも言いますが、主にこの上で宙吹きガラスを作ります。
吹き棹に巻いてきたガラスをいろいろ加工する作業台でのことです。
ブロー台とはよく言ったもので、この上で吹きガラスを吹いて膨らませますからブローする台ということです。
上部の横棒のところで吹き棹やポンテ棹を転がしながら加工します。
このベンチの前に座って仕事をしますが、座った右側の手の届く所には道具が置いてあります。
ある程度の数をこなす工場ではなく、工芸家として創作作品を作り出すような芸術家の場合、自分で素材を作ってから、さらに自分で切子細工を施すこともありえます。こういう切子細工をする所は工場ではなく、工房と言ったほうが適しています。

ピンサー
ピンセットを大きくしたものです。
宙吹きガラスを作るとき、ガラスをつまんで引っ張ったり、縮めたりする道具です。
例えば、宙吹きガラスでタンブラーを作るとき、口元をこのピンサーでつまんで延ばしたりするのに使います。

ハシ
ジャックとか洋バシという人もいますが、宙吹きガラスでは、グラスの形を整えたり、宙吹きガラスにくびれを入れたりするのに使いますので、一番使用頻度の高い道具です。
金属製の箸の上部を弾性のあるU字状平のたい金属で結んであります。
まあ、原理はピンセットとあまり違いありません。
ベンチに座り、左手は竿を転がし、右手はこのハシを持って吹きガラスを加工していることが一番多いのです。
「ジム・ムーア」というアメリカ製のものに人気が有ります。バネ感触がよく、皆が好むようです。
切子細工まで自分でやる人は非常に少ないようです。しかしそういう人も最初は勉強のため師匠について修行したと聞いています。

紙リン
宙吹きガラスを作るとき、ガラスの形を整えるのに使います。
新聞紙を重ね折りして水に漬け、内部まで十分浸み込ませます。
でもしっかり水を切っておかないといけません。ぼたぼた水が落ちるようではいけません。
紙リンの厚さは工房や作家の好みによりいろいろです。手に合う厚さというのがありますし、紙リンを通してガラスの感触が伝わってくるがたまらなく好きだといわれる作家もいます。
ベンチに座って左手で吹き棹を回しながら、右手の平に紙リンを持って、ガラスを包むようにします。
熱で焦げたり、手の形になじんできた紙リンの方が新品より使いやすいと言う人もいます。
まだなじんでいない紙リンは、熱でこげるという表現では少し足りません。焼けたガラスに当てられると、炎と煙を噴出します。下玉が見えないくらいに出てきます。

鉄リン
宙吹きガラスに丸みを作るためですが、簡単に言えば金属製のお椀です。
吹き竿を回しながら、巻いたガラスをお椀の内面に当て、形を整えていくのに使います。
お椀の中に、水とロウを少し入れて使うことが多いです。
宙吹きで作られたグラスは、グラスとして完成ですが、中には切子工場に移されて、切子細工される場合もあります。このような場合、そのグラスは切子細工のための素材と言うことになります。
ある程度の数を作る場合、大きさや形が揃っている必要があります。その様な場合にこの鉄リンは役に立ちます。型吹きほどの必要はない場合に丸みを揃えるのに具合がいいのです。
切子では下絵図案は書き込まれません。割り出し線を頼りに切っていきます。丸みが揃っていないといわゆる調子が狂ってしまうかもしれません。切子のためにも鉄リンは役にたつのです。

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