ローマガラス
ローマ
"ローマガラスは紀元前後5世紀に渡るローマ帝国内で作られました。宙吹きガラスはこの頃発明され、今日ではその宙吹きガラスの技術が発展して切子細工の江戸切子や薩摩切子にも使われています。
ローマ時代になる前は、特定の小さな地域でその技術が発展したり衰退したりしていましたが、ローマ帝国が広大になるにつれて発展は目覚しいものとなりました。
シリアやエジプトはローマに支配されてからは広大なローマの地域を自由に行き来し、その技術を広め、製品も各地に広めました。
職人もどこへでも移住することが自由でしたし、商人もどこにでも売りに行くことができたのです。
宙吹きガラスの発明
そうした背景の中で、紀元前1世紀の半ば、東地中海沿岸部で宙吹きガラスの技法が発明されました。発明された宙吹きガラスの技法は急速に帝国中に広まっていきました。また、その宙吹きガラスの技術が発展して現在でも切子細工の江戸切子や薩摩切子の素材にも使われています。
吹き棹の先に巻き取り、その棹の反対側から吹いて膨らませると言う宙吹きガラスの技法は、今日では当たり前のことになっていますが、当時のローマにおいては画期的な発明だったのです。
当時としては画期的発明であったといいましたが、歴史的発明と言った方がよいのかもしれません。なぜなら現在でもその発明をそのまま使っているのです。2000年もの間、いまだに使い続けているような素晴らしい発明だったのです。中空の器を作るのに非常に良い方法です。現在はそうして作られた宙吹きガラスのグラスの表面に切子細工をして江戸切子や薩摩切子を作っています。切子と言うのは、カットグラスのことですが、表面を彫って模様を彫刻することです。江戸切子はさわやかな切れのある輝きを特長とし、薩摩切子はぼかしを特徴としています。これらの表面を彫刻する切子の考え方もローマ時代に考えられていたようです。
話がそれましたが、宙吹きガラスの発明によって大量生産を可能とし、価格も安価になりました。ローマにおいては銅貨一つでコップが購入できたと言うことが記述されています。
ローマのセネカが記述しているのには、どのような器用な手をもってしても出来ないほどの実に様様な形の器をその息によって形成する、とされています。
従来は貴石を模した比較的小型の容器であったガラス器は、日用品として実用になるものに変わってきました。ローマ帝国の地域のほとんど全てから発見される、青や緑を帯びた透明な食器や貯蔵容器など、そのことを物語っています。
当時のものとして見つかるものには、食器類に限らず、医療器具、照明器具、装身具、建築資材、玩具など多方面にのものがあります。
さらに、以前は不透明であったものが、透明性を持つようになったことも特筆すべきことです。
日本において切子細工が作られたのは江戸時代の終わり頃、江戸切子としてですが、これは宙吹きガラスのクリスタルで細工されました。クリスタルは透明性が高く、切子にしたとき輝くように見えるのです。
ローマでは、金箔やペイントなどによる装飾技法の発展をもたらし、当時の社会文化にも影響を与えています。いつの世も、綺麗に輝く透明性は人々に愛されるものだったようです。
ローマガラスとは、「透明な日用品ガラスのルーツ」であると言うことができます。
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